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東京地方裁判所 昭和60年(ワ)5682号 判決 1985年8月16日

原告

住宅・都市整備公団

右代表者理事

竹岡勝美

右訴訟代理人

井上尚之

外二名

被告

牛山昭

被告

牛山進

主文

一  被告らは原告に対し、別紙物件目録記載の建物を明渡し、かつ、被告牛山昭は原告に対し、昭和六〇年四月一日から右明渡し済みまで一か月三万九六〇〇円の割合(期間が一か月に満たないときは一か月を三〇日とした日割)による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  この判決は、仮に執行することができる。

事実および理由

原告は、主文第一、二項と同旨の判決ならびに仮執行の宣言を求め、別紙のとおり請求の原因を述べた。

被告らは、適式の呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭しないし、答弁書その他の準備書面も提出しないから、請求原因事実を明らかに争わないものと認め、これを自白したものとみなす。

右の事実によれば、原告の請求はいずれも理由があるから認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九三条を、仮執行の宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおりに判決する。

(裁判官鈴木康之)

請求の原因

一 原告は、住宅・都市整備公団法附則第六条第一項の規定に基づき、昭和五六年一〇月一日をもつて訴外日本住宅公団(以下「訴外人」という。)の一切の権利及び義務を承継したが、その所有する別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)につき、訴外人と被告牛山昭との間において、昭和三三年一二月九日、日本住宅公団賃貸住宅賃貸借契約に基づき賃貸借契約を締結し、次の如き約定をした。

(1) 家賃は一か月七六〇〇円を支払う。

(2) 共益費として毎月訴外人が定める額を支払う。

(3) 右家賃及び共益費の合計額(以下「家賃等」という。)を毎月二八日までに訴外人に支払う。なお、期間が一か月に満たないときの家賃等は、一か月を三〇日とした日割計算により算出する。

(4) 被告牛山昭が賃貸住宅を退去しようとするときは、直ちに訴外人に通知するものとし、これを怠つたときは、訴外人は催告によらないで契約を解除することができる。

(5) 被告牛山昭が住宅を賃借するにあたり、共同生活の秩序を乱す行為があつたときは、訴外人は催告によらないで契約を解除することができる。

(6) 契約解除後に本件建物を明渡さないときは、契約解除の日の翌日から起算して明渡しの日までの不法居住期間中、右家賃等相当額の一・五倍の賠償金を支払う。

なお、家賃は昭和五八年五月一八日文書をもつて昭和五八年一〇月一日以降一か月二万四六〇〇円に変更し、共益費は昭和五六年二月文書をもつて昭和五六年四月一日以降一か月一八〇〇円に変更した。

二 被告牛山昭は、当公団に何らの届出もなく、昭和五〇年五月、肩書住所地に転居し、本件建物を被告牛山進に使用させている。

三 これは右契約で禁止する無断退去にあたる。

四 被告牛山進は本件建物を使用するに当たり、本件建物の附属設備を故意に破壊する行為を繰り返し、かつ、深夜にステレオ、楽器等による騒音を発し、近隣居住者に対し著しい迷惑を及ぼしている。

五 このような事情について原告は、被告牛山昭及び牛山進に対し、是正措置を講じるよう、昭和五九年一一月初めまで、再三にわたり勧告を行つてきた。

六 これにも拘らず、被告牛山進は昭和五九年一一月一二日、本件建物一階に設備されている郵便受箱の一部を故意に損壊した。原告は被告牛山進の行為がたび重なる悪質なものであることに鑑み、昭和五九年一一月一六日、杉並警察署長あてに刑法第二六一条を罰条とする告訴を行つた。

七 右告訴により被告牛山進が収監された後、被告牛山昭から告訴取下げの依頼があつたため、本件建物を昭和六〇年三月三一日限り明渡すこと等を内容とする示談書を取りかわし、原告は昭和六〇年二月二五日、右告訴を取り消した。

八 右のような事情の下にあつて、原告と被告牛山昭との間の賃貸借契約は、その基盤たるべき信頼関係を完全に失なつたものと言わざるを得ず、被告らは、事実上の賃貸借契約合意解除にあたる右示談書に記載された本件建物の明渡し義務を免れない。

九 ところが、右示談書に反し、被告牛山昭と被告牛山進は、右期限までに本件建物の明渡しをせず、原告からの昭和六〇年四月八日付明渡し履行の催告通知にも応じないまま現在に至つている。

一〇 従つて、原告は、被告牛山昭と被告牛山進に対して本件建物の明渡しを求めるとともに、被告牛山昭に対して主文記載のとおりの金員の支払いを求める。

物件目録

東京都杉並区荻窪三丁目七番

荻窪公団住宅

第七号棟第一〇六号室

床面積四四・八九平方メートル

畳・建具 其の他造作付

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